ソリッド・ステイト・ストレンジャー(Solid State Stranger)
Tuesday, June 3, 2008, 04:05 PM | Posted by Supporters
その前夜は期待と不安が入り交じり、まるで遠足に行く前の日の幼稚園児になった気分であまりよく寝付なかった。またそれ以前にスタッフの方との連絡の行き違いがあり、数日前の撮影に参加出来るはずが出来なかったという事情もあった。とかくこの世は常ならず。本当にやる気満々で心から準備していたのに透かされ、かなり意気消沈していたという経緯もあったのでそのせいもあったのかもしれない。
場所は某企業の体育館として使用されていた場所。到着すると係の人がいて受付で名前をチェックする。会場に入って小道具や履き物やらが雑然と一体となって整理され置かれてある。更にシャッターの向こう側にチラッと視線をやると全体に緑の幕が張ってあるのが見えた。特撮関係の映画のメイキングを見ればよく出てくる例のあれである。まずもってあの紀里谷監督が時代劇を撮る。その一報を聞いた時ただならぬ作品になるだろう、ましてや又前作と同様賛否両論になるだろうと直感で思った。なのでさる縁でエキストラ募集の記事を見つけた時自身の役者のプライドを捨てて何をおいても現場に参加したかった。
壁に張られた矢印を頼りにエキストラの待機場に向かう。待機場と言えば聞こえはよいが単なる体育館の客席のベンチシートである。どうやら気が高ぶっていたのが幸いしたか指定された時間のグループの中では一番乗りだったようだ。まず用意された朝飯をさらりとたいらげ(洋風と和風があり)、待機場の入り口壁に張られている今日やる撮影シーンのイメージ画をしげしげと見つめる。まるで特異な色彩感覚で知られる世界的名画家ドラクロワが墨絵を書いたような不思議な世界観。この世界で監督は何を描き、何を語ろうとするのか。今回末端で関わった者としては、普通の人より期待値は大きく興味は尽きない。
会場内に集まる人、人、人。次第にその渾然一体に固まった人が放射する熱で館内が充満してくる。ふり当てられた集合時間のグループに分かれて、担当者から呼び出しがかけられ、衣装を受け取りに行く。今回の衣装担当はさすがにインタナーショナルな作品らしく外国の方であった。朝からノリの良い音楽をかけリズムをとりながらエキストラの人の顔と体型を見て沢山ある衣装の中から瞬時に判断、取捨選択して衣装を決める。これぞまさしくプロのお仕事。そしてメイク。比較的映画のスタッフというのは現場は汚れるものという認識があり“おしゃれ”という言葉とは相容れない職人気質なある意味ドカチンな感じがする人種の方が多いが(差別感情は全くありません)そこにおられたメイクさんの立だづまいはシュッとしいて、地味だがやたらにおしゃれでいてどこか普通の現場いるメイクさんとは明らかに違っていた。そして聞いてみたらやっぱり監督の業種の幅の広さから集められた方で元来は服飾関係のスタッフの方だった。なるたけ監督と意思統一をさせるのが早い、仕事の出来る混成スタッフ。これが僕から見た紀里谷組の印象であり、それがまた良い混沌をもたらしてこれから見た事もない映像を作らんとする現場に活気と彩りを与えていたのは事実だった。
衣装を着、メイクをしてもらったら待合場で待機。しばらくして下の緑の幕が張ってある撮影現場に呼ばれる事になった。早速今日やるシーンの説明をしながら助監督がすぐさま紀里谷監督の私生活をネタにして場をなごませる。監督それを聞いてニャッと苦笑い。さすがに僕らも苦笑いするしかない。その場にいる誰もが一番監督に聞きたがっているくせに絶対この場では一番に触れちゃいけないであろう事柄を真っ先に助監督さんから開口一番にネタにされたのは正直びっくりした。そう、そこまでして場を和ませなきゃいけないのは理由があったのだ。
集められたエキストラの前には塔のように組まれた足場に何台ものカメラがこちらを向いて立っていた。かいつまんでいえばその日は五衛門と言えば…のシーン。それを見ている群衆ということだった。僕はいつものように監督がどういう事をこのシーンで欲されているのか理解しようと即座に努めた。察するにこのシーンは群衆の●●が●●する所なのでかなりこの映画的には重要なシーンなのではと思った。また“それにしても芝居も全く未知数のエキストラの方々にこのシーンを任せるのは少々リスキー過ぎないか、監督?”と心の中で思ったし、また“朝からこんなボルテージの高い撮影は初心者にはキツいよ。”とも思った。仕方がない。端役とはいえ(たぶん)他の方より僕は現場慣れしている方だろうしそういうのは気付いた人が率先してやらねばならない。それにこう考えているのは絶対僕だけじゃないないはずだし、たとえ現場慣れしていない人であろうと監督の事がキライな人間はここにはまず来ないはず。群衆に紛れ込んだスタッフや、僕みたいに手慣れたすぐに羞恥心を捨てられる人たちがやる気をみせればきっと集団に伝染してうまいグルーヴが作れるはずだと思い、僕は徐々に自分の役者魂を着火していった。しかし着火したら止められないのが性分。はっきり言って監督にしてやられた感じ。この映画はCGを多用する映画ゆえ多くの群衆に見せるため何パターンも撮り、そして何度も何度も大声をだすはめに…。
さすがに終わった後はかなり身体的に疲れきってしまったが、これだけ要求されるんならと結局それ以後現場には6回も通いつめることになるため、少し顔見知りになったスタッフの方が話ているのを聞いたら“あのシーンの時のエキストラはよかったよね”とちらりと小耳に挟んだので参加してがんばったと自負していたからこそ、僕が参加しているのは知らない方から即座にそういう素直な感想を聞けたのは実にうれしかった。後はうまくそれが画面に反映していればそれにこしたことはないのだが。
とにもかくにも今は妖怪人間が雄叫びをあげるがごとく“早く完成した作品が見たい!”と心から待ちわびている毎日だ。そしてそう、たまにこのサイトにあるメイキング映像を見るとさらにその思いが募るのだ。。。
MAY THE PEACE BE WITH YOU!!
written by shoe-G(put on my loyalty for the GOEMON)